テントサイトへ戻ると父さん達は片付けの真っ最中だった。
『お、遅かったな。サザエはどうだったんだ?』
ボクは得意げに鼻の穴を膨らませながら、腰に下げた網をを父さんの目の前にぐいっと突き出した。
『おおっ!スゴイじゃないか!こんなに沢山のサザエが採れたのか!』
『へへーん!スゴイでしょ。』
母さんも横から覗いて、
『あら、ほんとスゴイ!こんな大きいのをよく見つけたわね!』
と目をまんまるにして驚いていた。
父さんと母さんの顔を見たら、急にお腹が空いてきたので、採って来たサザエをさっそく母さんがつぼ焼きにしてくれた。
チェアに寝そべりながら雲一つない青空を見上げていると、父さんが
『もうそろそろ帰らなきゃいけないんだが、どうだ、キャンプは楽しかったか?』
と尋ねて来たので、一昨日の夜とは比べ物にならないテンションで
『うんっっ!!!また行きたい』
と元気よく答えた。
片付けも殆ど終わり、荷物でパンパンになった車にチェアを積んで、帰りの準備は整った。
ボクはお別れの挨拶を済ます為に、コージ達のサイトへ向かった。
『コージ、色々ありがとう!また、夏休みが終わったら学校でね!』
『うん、またね!今回のキャンプはオレもすっごく楽しかったよ!』
『じゃあ、またね!』
『うん、またね~!』
少し後ろ髪を引かれながらコージとの別れを済ませ、車に乗り込む前に振り向くと、遠く向こうの方に見えるコージとお父さんの会話が微かに聞こえた。
『あれ?コージ、そういえばナイフはどうしたんだ?』
『海でなくしちゃった!』
『あんなに大事にしていたのに・・しょうがないなぁ、じゃあまた今度買いに行かなきゃな。』